「これ外したら、もっと掃除しやすくなりませんか?」
タワーマンションにて。
デザイナーさんと浴室見ながらそんな話に。
お風呂のエプロン外して、いっそのこと置き型の浴槽みたいにしちゃう。
見た目スッキリ。中も丸見え。掃除しやすそう。
うん、発想としてはめちゃくちゃいい。
「それ、おしゃれですね」
この一言で空気はちょっと前のめりになる。
わかる。毎日使う場所だし、どうせなら気持ちよく使いたいよね。
ただね、こういう時に一回ブレーキ踏むのが僕の役目。
「メーカーには確認しました?」
「まだです」
「これやると配管全部見えますけど大丈夫ですか?」
「え、そうなんだ」
もう一歩だけ踏み込む。
「仮にやる業者がいたとしても、漏水した時の責任とかメーカー保証は基本なくなりますけど…大丈夫ですか?」
「…だよね」
この“だよね”の瞬間が、現場のリアル。
やりたいことと、守らなきゃいけないこと。
ここがぶつかる。
これ、別に否定してるわけじゃない。
むしろアイデアとしては好き。めちゃくちゃ好き。
でもさ、タワマンって一回やらかしたら自分の家だけじゃ済まないんよ。
下の階、さらにその下まで巻き込む可能性ある世界。
“おしゃれ”って自分の満足で完結するけど、
“水漏れ”って他人を巻き込む。
ここ、めちゃくちゃデカい違い。
実際、普段の現場でも
「なんでこうなったんだろう?」って案件のほとんどが
ほんのちょっとの判断とか、知らなかったことから来てる。
逆に言うと、そこさえ外さなければ防げたことがほとんど。
だから僕は、
「それやりましょう!」って背中押すより
「それ、ほんとに大丈夫?」って一回止める側に回ることが多い。
そのほうが、あとで笑って話せる確率が高いから。
で、最終的にどうなったか。
「これ、戸建てだったらやってみたいね」
ここで全員ちょっと笑う。
この空気、好きなんだよね。
やりたいことを否定せずに、ちゃんと現実も見て、
じゃあどこなら楽しめるかって話に着地する感じ。
おしゃれも大事。
掃除のしやすさも大事。
でも最後に残るのって、
「なんも起きない普通の日常」だったりする。
風呂入って、普通に使えて、普通に寝れる。
結局これが一番強い。
派手じゃないけど、壊れない。
目立たないけど、安心できる。
そういうのを積み上げていくのが、
僕のやってる住宅メンテナンスだと思ってる。
もし今、家のことで「これどうなんだろう?」って思ってることあったら、
その違和感、だいたい当たってるから。
そのままにしないで、一回ちゃんと見たほうがいい。
大ごとになる前にね。
今日もそんな現場の一コマでした。


